破綻懸念再浮上も市場で話題にならないドイツ銀行は本当に大丈夫?
5月後半欧州市場ではいきなりイタリアの政情不安が大きくクローズアップされ、その後連立政権の誕生で一旦はリスク回避が解消された形となっていますが、それと並行して5月31日にFRBがドイツ銀行の米国内業務について問題を抱えた状況であると内部査定評価をしていたことをウォールストリートジャーナルが報じたことから株価が大きく下落し1日で7%を超える下落を示現するというきわめて危機的な状況が展開されることとなりました。
このドイツ銀行は2016年にも経営不安説が飛び出す問題銀行でありすでに年初から4割以上株価は下げ近々に7000人規模のリストラも敢行するという話がでており、穏やかならざる状況が継続中です。イタリアの政情不安回避から足元では相場の材料にはなっていないドイツ銀行問題ですが、ドイツにとっての大きな不安要素であることは間違いなく、今後どのような展開になるのかが非常に注目されるところです。
業務の現況が把握しにくいドイツ銀行
このドイツ銀行、これまでも結構頻繁に破綻の噂が高まり2016年にもLIBOR不正の損害賠償に加え不良債権ぞうかによる引当金の増大、デリバティブによる莫大な損失の発生懸念から倒産するのではとといった観測が強まったことがあります。
この中でも特に問題になってきたのが総額数千兆円ともいわれるデリバティブ契約で、実は金融当局も株主もこの領域の取引については正確な状況を
把握できていないという話が登場しています。
同行が抱えるデリバティブ領域は対象範囲が極めて大きいことから何がきっかけで損失が拡大するかよくわからないこともあって潜在的なリスクは相当高い状況となっています。一説にはドイツのGDPの10倍近くにも
匹敵するのではないかと言われているわけですからひとたび問題が前面に登場することになれば相当深刻な状況に陥ることが予想されます。
ドイツ政府と金融当局が長年ドイツ銀行を放置してきたことも大きな問題の原因であり、ひとたびドイツ銀行が破綻ということになるとその負債総額から考えてとてもではないですがドイツ一国だけでは支えきれず欧州圏を巻き込む悲惨な事態に発展する可能性も指摘されはじめています。
リーマンショックで米系の投資銀行業務を引き受けたのがドイツ銀行
ドイツ銀行はリーマンショック後米系の投資銀行が次々と撤退を余儀なくされ扱わなくなった領域を一手に引き受けて成長したとも言われており、既にドイツ銀行は破綻したリーマンの総資産を超える規模になっています。
2016年にもCoCo債が売られて急激に株価暴落を引き起こした、いわば前科者であるだけにここからのドイツ銀行の状況変化には十分注意が必要になりそうです。
ドイツ銀行がまさかの破綻ということになれば、イタリアの債務問題どころではなく、EU域全体に深刻な影響が及ぶ問題となるだけに、ドイツのみならずECBにとっても大きな問題となりそうですが、今のところこのテーマが前面に登場して騒ぎになるという状況には至っていません。しかし為替相場というのは面白いもので、もとからそこにあった材料でも市場がいきなり騒ぎ出すと急に大きな問題として顕在化するというのがある種の特徴にもなっていますから、突然大きな問題としてクローズアップされる可能性も考えておく必要があります。ドイツ銀行の問題が本格的になれば当然のことながらユーロは激しく売られることになりますし、事と次第によっては相場全体の暴落要因にもなりかねないリスクを抱えるものであり、ECBの緩和縮小とは別に相当注意して見守っていく必要のある材料となりそうです。とくに米国での銀行業務になんらかの制限などを受けた場合には想像以上に大きな騒ぎとなることも覚悟しておかなくてはなりません。