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7月第一週ドル円は米債金利状況と中国株・人民元動向に注目
6月最終週、為替相場は米国の対中関税政策の実施を巡って米国側の要人発言の楽観的なニュアンスや強硬なニュアンス次第で上下に振らされる展開となりました。週明け6日にはいよいよ米国の対中関税第一弾が執行されるかどうかが大きな分岐点になりそうですが、株式相場も為替相場もこの米中貿易戦争の状況を十分に織り込んでいるとはいえないものがあり、関税の執行が改めて相場の下落を呼び起こすことも考えられることからかなり注意が必要になりそうな一週間となりそうです。
■米債7年~10年の逆イールド化は時間の問題
足元では米国7年債と10年債のスプレッドがほとんどなくなりかかっており、ややもすれば逆イールドが示現する寸前のところまで来ています。通常イールドカーブのフラット化は2年債と10年債のスプレッドで判断することが多いわけですが、短期から長期に至るまでの債券金利で短期債の利率が長期債を一部でも上回りはじめるとその後はさらにフラット化や逆イールドが進むことがこれまでにも確認されているだけにこの状況は非常に危惧されるものとなりそうです。
足元では米2年債と10年債のスプレッドは0.32bpとリーマンショック前をはるかに下回るほどフラット化が進んでおり、リセッションが間近いことを強く示唆する動きになっています。
Yeild spread
Data Ychart https://ycharts.com/indicators/210_year_treasury_yield_spread
■やがて米10年債も上昇に転じる可能性大
5月末にイタリアの政情不安からいきなり買われ始めた米国10年債は3.2%に近づく金利まで上昇したところから一気に2.8%台へと利率が急降下していしまい、足元ではドル円は上昇しても米10年債は3%には戻さないという相関関係の崩れを継続中です。
ただ、一部の金融機関は再度米10年債が上昇に転じると予想しはじめており、JPモルガンもごく近いうちにこの10年債が3%台に復帰すると見ているようです。
Source Bloomberg https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-06-28/PB0JL16KLVR501
米債金利の上昇は間違いなくドル円の上昇につながるだけにここからの米債金利については十分な注意が必要になりそうです。
ただし、逆イールドが示現しても、10年債自体が3%台を上伸していくことになっても株式市場にプラスに働くものは一つもなく、どこかで株式市場が主導的に反転大幅下落に向かうリスクを常に背負っていることも意識しておく必要がありそうです。
ドル円は先週末NYタイムの午後に111円に接近する場面がありましたが、結局111円台に乗せて終わることはできずに長い上髭をつけて週の取引を終えています。チャートから見ますとさらに上昇しそうな気配が濃厚ではありますが、月足のチャートでチェックしますと2015年につけた高値である
125.852円から直近の高値を結んだレジスタンスラインが111.700円当たりで下向きに走っており、ざっくり言えば112円を超えないかぎり明確な上昇トレンドに入ったとは言えないところに差し掛かっています。したがってここからロングでついていくのは超短期売買以外はかなり難しいのが正直なところで、日米の株価動向次第では逆に戻り売りの絶好のチャンスにもなりかねない状況です。
週明けからは相場がどの位の強さで111円台を上伸していくのかまず確認してから次の売買の方向を決定していきたいところで、5月21日につけた113.400円のレベルを抜けられなければ、ダブルトップをつけて下方向に動き出すことも想定しておくべきでしょう。
USD JPY month as of 0630 2018
シーズナルサイクル的には米国の株価は夏場に下落しやすく、とくに中間選挙がある年については8月に高値を付けてからは11月までは下落に転じることが多いだけにドル円も7~8月は陰線引けになることが多いことも意識しておくべきでしょう。
■2015年のチャイナショックをはるかに超える人民元安
気になるのは貿易問題で米国と対峙している中国の金融情勢です。
Chart Bloomberg https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-06-27/PAZN4U6JTSE801
人民元はここ2週間ほどで実に3%下落しており、中国政府が積極的に人民元安を画策しているわけではないという見方もあるものの確実に人民元安を容認していることは間違いないようで、貿易赤字で対立が強まっている米国がこうした状況を懸念しはじめればさらなる貿易戦争に発展する火種になりかねない状況です。そもとも中国は米国がしかけてくる広範な関税の適用額と拮抗するほどの米国からの輸入品を抱えていないだけに、どこかで為替を人民元安にするか米債を叩き売って米国にダメージを与える可能性は十分に考えられる状況です。また中国上海株価も2015年ごろ大騒ぎになった3000ポイントを簡単に割り込んでおり、フラッシュクラッシュが起きた2015年8月の相場状況よりも足元の中国の株と為替はさらに悪化している点が非常に気になるところです。
為替市場はテーマとして市場がフォーカスしないことには相場にその影響が織り込まれないという不思議な側面をもっていますが、5月のイタリア政局のようにそれまでずっと問題が顕在化していてもどこかのタイミングで突然それがフォーカスされはじめるといきなり相場が動き出すこともあるだけに中国の金融情勢にも相当注意をはらうべき時間帯にさしかかっているようです。ここからのドル円相場は大きく動きにくそうにもみえますが、たとえ上昇したとしてもいきなり反転大幅下落に陥るリスクはつねにありそうで、短い時間足で上昇過程に乗っても常に下方向へ動く危険性を意識した売買を心掛けることが重要になりそうです。