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米朝の関税合戦開始を経て今週はNATO首脳会談に注意
7月第一週の金融市場はほとんど米中の貿易問題に絡む関税実施を前に神経質な展開となりました。株式市場は先行してこうしたリスクの高い状況を嫌気して売られる展開が先行しましたが、ドルは総じて高く推移することとなり、各資本市場感における相場の相関性がほとんど崩れ始めていることがあらためて顕著になった一週間ともいえます。
USDJPY day as of 707 2018
ドル円日足
ドル円は先週一旦上値を試す動きをみせましたが、111円にあった巨大なオプションにも阻まれる形で5月21日の高値であった111.395円を抜けることなく週末の雇用統計で失速し110.500円台で越週となりました。
■ドルが総じて高いのは米系ファンドのレパトリが影響か
ここのところ国内でも株が売られて価格が大きく下げてもまったくドル円が連動して下げることがなくなるという独特の状況が継続中です。為替ですから様々な材料が複合的に影響しあっていることは間違いありませんが、ひとつ顕著になりはじめているのが米系ファンドの広域な領域における投資資金の引き上げと米国へのレパトリエーションが加速していることがあげられます。足もとではトランプ政権が中国のみならず同盟国を相手にしてまで関税の強化策を打ち出し始めていることが大きな原因で 20世紀初頭を思い起こさせるような状況にレイダリオ率いるブリッジウォーターアソシエイツが相当弱気な見通しと市場からの引き上げを示唆する発言をしていることに同様の投資手法をとるファンド勢がかなり同調して様子見の展開をはじめていることがドル高につながっているという見方が強まっているのです。
■20世紀なら完全に世界大戦の世界
ここ1世紀ほどの資本主義が近代化の歩みを見せた中では1929年の世界恐慌以降に主要国各国は関税を大幅に引き上げることで、まさに保護主義化を強力に推進することとなり、結果的にはブロック経済が加速し、最終的には第二次世界大戦というとてつもない世界的な消耗戦を経て1948年にGATTが創設されることでようやく自由貿易へと舵を切ることになったのがいまさらながらに思い出されます。
とくに米国がおこなった保護主義政策の過程では1937年にかなり景気回復したところで利上げを行って金融引き締めをした途端に株式相場が大きく崩れ始め、なんともとに戻るのにほぼ戦争を経て10年かかっており、前出のレイダリオはまたしても足元の状況が1937年の米国に酷似していると警告を発しています。
■世界の安全保障の場から退場しようとするトランプ
市場は相変わらず貿易戦争の行方に注目していますが、それとは別に今週注視しなくてはならないのが11日からベルギーで開催されるNATO首脳会談です。これまでこうした会談はそれほど注目を浴びる政治イベントではありませんでしたが、すでに米国トランプ大統領は会議の席上米国は「世界の貯金箱」にはなれないと加盟諸国に伝える方針としており、NATOへの軍事的支出を大幅に削減することを持ち出してNATO加盟国がもっと独自に金を出すように強硬姿勢を打ち出し、欧州各国と緊張関係を急激に煽った上でその土産をもって翌週プーチンと会談し、一定の合意と緊張関係の改善を大きくアピールすることで本格的に米国が世界の安全保障の場から正式に退場する動きをとることが強く懸念されはじめています。前回のG7の際にもトランプとメルケルがにらみ合いをする場面が写真で流れて話題となりましたが、今回もトランプが欧州圏を相手にしてちゃぶ台返しをすることはほぼ間違いなく、米系ファンドがレパトリを加速するのもこうした動きを察知した前倒しの行動ではないかといった憶測も飛び交い始めています。
■米国への資金回帰が一巡すればドル安に転換も注意
週明けのドル円に関して言えばまだ上値追いをする可能性は残されていますが、すでに111円を上抜けていくほどのパワーが感じられず、日足ではトレンドもでていないことから横展開か、最悪下落方向に転じる可能性を考えておく必要がありそうです。季節的なサイクルでいいますと過去10年あまりでは7月はドル円が月初よりも月末に円高になりやすい状況で、前述の米系ファンドのレパトリが一旦終了すればドル円も俄かに円高方向に反転するリスクを考えておくべきでしょう。
ドル円は109円台では4月に話題になったシャイアーを買収した武田がブリッジローンの高金利を嫌気して安値で延々をドル円を買い向かっているという情報もあり、これが完了するまでは大きく下げない可能性もでていますが、相場全体が下げる局面では買い切り玉を簡単に飲み込むことも考えられるだけに強力なサポートと考えるのには無理がありそうです。
ドルインデックス 週足 Data investing.com
今年4月以降一貫して上昇してきたドルインデックスも足元では完全に一服しはじめており、先週は週足で陽線がでていますが、ここから大きく上昇することはどうやらなさそうで、ドル円もユーロドルも確実なトレンドは出ていないものの緩やかなドル安が継続しそうで注意が必要です。
いずれにしても今週はまだまだ政治的な状況に相場が振らされそうな状況えすから、テクニカルだけに頼らずファンダメンタルズの情報にも注意深く対応することが肝要になりそうな一週間です。